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「拡がり持った検査室」が大切 熊本保健科学大の富田氏

熊本保健科学大学医学検査学科 富田文子教授
 熊本保健科学大学医学検査学科の富田文子教授は11月1日、新潟市で開かれた全国自治体病院学会で講演し、前職で取り組んだ検査室改革について述べた。病棟や地域連携などでも検査技師が活躍している検査室を「拡がりを持った検査室」と表現し、実現のため、複数の専門分野を持ち、チーム医療に対応できる人材の育成を進めてきたことを報告した。

 富田氏は、済生会熊本病院(熊本市、400床)の技師長を務め、今年4月に教職に転じた。

 説明によると同病院の中央検査部は、検体検査33人、生理検査36人、予防医療センター検査室26人の100人規模。富田氏が入職した約30年前から4倍の人数に増え、特に生理検査や予防医療の部署にスタッフが手厚く配置されてきた。検体系でも病理や細菌検査の部門が増員され、「職人芸の必要な部門へのシフト」(富田氏)がされてきたという。富田氏も超音波検査士を取得し、国立循環器病研究センターで血管エコーを研修するなど専門性を高めてきた。

 きっかけになったのが2016年4月の熊本地震。天井が落ちロッカーが倒れるなど病院も大きな被害を受けたが、震災発生30分後にはトリアージブースを1階ロビーに設置し、その一角に検査ブースを置いた。4月に入職したばかりの新人が活躍した一方、道路が寸断されていたり遠方に出かけていたりして生化学・血液のスタッフが集まれず、雨漏りの中、経験者2人が分析装置の立ち上げなどに緊急対応した。

 富田氏はこの経験を通じ「スペシャリストでありゼネラリストであるスタッフ育成の必要性を皆が実感した」とし、特定のスタッフに依存しない検査室へと本格的に踏み出したことを説明。複数の専門分野を持ち、ゼネラリストとしても活躍できる検査技師の育成に取り組んだことを示した。富田氏も役職が上がり院内の会議に参加するようになって、検体検査の知識が十分でなく戸惑いを感じていたという。

 それまで生理や血液などの分野別に分かれていた部門を、大きく「生理検査」と「総合検体」の2つの部門に再編し、分野や部門をまたいだ人材育成を進めた。その際、ローテーションを経験していた主任を中心に据え、さらに必要性を理解している技師を主任に登用するなどして体制を整えた。育成に当たっては教育担当者を配置し、力量レベル分類表や業務習得・力量評価シートなどのツールを活用した。

 現在、救急外来や医療情報分析室に検査技師が常駐し、さらに病棟や心臓カテーテル室でも活動する。肝疾患コーディネーターやがんゲノムコーディネーターとして活動する技師もいるという。
2024.06.03_記事下登録誘導バナー_PC.png

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