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「臨床側が欲しい時に欲しい情報を提供できる技師」が目標 広島大学病院の田寺氏


 広島大学病院診療支援部の田寺加代子氏は2月8日、広島大学病院の第4回臨床検査研修会で、広島市微生物検査技師を育成する立場から自身の経験を交えて講演した。「臨床が欲しい時に、欲しいデータ(情報)を提供できる技師」が育成の目標との私見を述べ、原因菌を推定する力を備え、患者背景を踏まえて必要な検査を判断できる技師の育成を意識していることを説明した。

 田寺氏によると微生物検査室のメンバーは現在8人。うち6人が経験15年以上の認定技師で、技師5年未満の2人が育成中。同世代のベテランが多く、次世代の育成が急務の課題だという。微生物検査は経験に基づく判断が必要な場面が多く、マニュアルに書ききれず、人材育成の悩みの一つになっているとした。

 同病院の診療支援部では、新卒で入職後、1年目に当直業務を習得し緊急検査士の取得を目指す。2年目に配属が決まり、微生物検査技師の育成が本格的に始まる。2年目は県学会や支部学会での発表、3年目は2級検査士(微生物学)の取得を目標とする。一通り微生物検査ができるまでには約3年かかる。

 田寺氏は当初、微生物検査にあまり興味が持てず「渋々やっていた」が、15年以上前に経験したある症例が微生物検査技師として研鑽を積んでいく決心につながった。グラム染色で染まらず、臨床側に陰性と報告したMetamycoplasma hominisの症例で、自分の知識不足を痛感し「次は絶対に見逃さない」と決めた。今では「推し菌」となり、研究対象の一つになった。同病院では、「レアな菌」に遭遇すると担当者が特徴などをまとめて検査室全員で情報共有しているという。

 微生物検査技師の育成については、「この菌なら自分が一番詳しい」と言えるような「推し菌」をつくるなどして知識習得の機会にしていくことをアドバイス。また、臨床側の視点を知るため、後輩が感染症科カンファレンスに参加して質問もできるよう環境を整えることは指導者側の役割だとの考えを示した。感染症科の病棟ラウンドに参加し、感染症患者の状態を実際に観察することも大事だとした。

 後輩と成功体験を共有することも重要だとし、特殊な培地を使ったり条件を変えたりして菌を培養する「本気培養」に取り組むことも手段の一つとだとした。

 田寺氏は、「人材育成の方法には正解はなく、永遠の課題だ」としつつ、感染症分野に興味を持たせ、面白さを伝えることを重視して後輩の育成に取り組んでいくと述べた。
2024.06.03_記事下登録誘導バナー_PC.png

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