近畿大学医学部内科学教室の林秀敏主任教授らの研究グループは、シスメックスとの共同研究で、ニボルマブ(製品名=オプジーボ)などの抗PD-1抗体の効果を、sPD-L1やsCTLA-4などの可溶性免疫チェックポイント因子により予測可能であることを明らかにした。4月2日(日本時間)に、国際臨床医学誌「Journal of Clinical investigation」(オンライン版)に発表した。研究グループでは「(腫瘍組織を検体とする)既存のバイオマーカーと異なり、血液で解析するため、リアルタイムに患者の免疫状態を予測可能。今後、非小細胞肺がんの治療方針を検討する際に役立つ」としている。
発表されたのは、近畿大学のほか、京都大学大学院医学研究科の茶本健司特定教授、同医学研究科附属がん免疫総合研究センターの本庶佑センター長らが、同社と取り組んだ共同研究の成果。
医師主導治験では、シスメックスと共同開発した可溶性免疫チェックポイント関連因子の精密測定法を活用した。進行非小細胞肺がんの治療開始前に患者50人から採取した血液検体で、血球の遺伝子解析と血漿中の可溶性免疫チェックポイント関連因子を全自動免疫測定装置HISCLで測定した。
測定したデータからは、腫瘍のPD-L1発現が高いか、T細胞の浸潤が多い腫瘍がある患者では、可溶性免疫チェックポイント関連因子の濃度が高く、抗PD-1/PD-L1抗体薬への不応答性が相関することを見いだした。特に血漿中のsPD-L1とsCTLA-4の濃度を確認することで、抗PD-1抗体の有効性を予測できる可能性が示唆されたという。一方で、細胞障害性抗がん剤や分子標的治療を受けた患者では、治療効果と可溶性免疫チェックポイント関連因子の濃度に相関はなかったとしている。