厚生労働省のワーキンググループ(WG)は2月7日開かれ、デジタル田園健康特区の岡山県吉備中央町が提案している救急救命士によるエコー検査の是非について議論した。搬送中の救急車内で救急救命士がエコー検査ができるよう同町側が規制改革を訴えたのに対し、WGの構成員からは安全性などに慎重意見が相次ぎ、結論が出なかった。厚労省は再度会合を開く方針で、3月末までにWGの意見をまとめる予定。
説明によると吉備中央町は2次救急病院が町内になく、1時間以上かけて町外の高次医療機関に救急搬送している。町側は、救急搬送中にエコー検査ができれば、▽患者の状態に応じた適切な医療機関に搬送できる▽搬送先病院では事前準備が可能で、到着後直ちに治療を開始できる―などとして、遠隔からの医師の指示の下で救急救命士が行えるよう規制改革を求めている。
同日は、山本雅則町長や、一緒に推進している岡山大学の那須保友学長らが現地の会合に出席。席上、山本町長は、「住民アンケート調査でも約40%が救急搬送に不安があると回答している。この課題を解決するために搬送中の救急車内での救急救命士の役割拡大を目指している」と述べた。
●深澤氏が反対意見「技術面の難易度高い」
これに対しWGの構成員からは慎重意見が相次いだ。
チーム医療推進協議会理事の深澤恵治氏(日本臨床衛生検査技師会専務理事)は、エコー検査は「非常に技術面でも難易度が高い」とし、「基礎的な能力があれば対応可能」とする町側の主張に反論。臨床検査技師は3年程度かけて技術を習得しているなどとし、2時間程度の講習により救急救命士がエコー検査を行うことは安全性や技術習得などの観点から認められないとの立場を強調した。
ほかの構成員からも「走行中の車内は揺れが大きく、さらに、静止して寝ていられない方がほとんどという中で難易度の高い検査をするのはどうか」「遠隔からエコー検査を指示できる医師が夜間帯に確保できるのか」など慎重な意見が出た。
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