東京大学大学院医学系研究科の佐々木毅特任教授(日本病理学会常任理事)は3月12日、病理に関するプレスセミナー(サクラファインテックジャパン主催)で講演した。今年1月に起きた能登半島地震などを例に、災害発生に備えた病理分野のデジタル化を喫緊の課題に挙げた。
佐々木氏は、世界的な異常気象などを背景にした自然災害への備えとして病理画像のデジタル化が急務だと指摘。特に病理分野では、スライドガラスの保管義務年限などの規制もあり、地震によるスライドガラスの破壊などが起きやすい点を挙げた。
その上で、医療情報システムやデータの保全を図るため国立大学42校で着手している「ジェミニプロジェクト」の取り組みを紹介した。このプロジェクトでは、放射線や内視鏡のデジタルデータは登録されているものの、病理画像は対象外となっている。
佐々木氏は「病理部門では、データのデジタル化がされておらず、(建物に被害が及ぶような)災害が起きれば全てが失われることになる。データをデジタル化し、可能なら遠方のクラウドに画像を保管することにかじを切るべき」と述べた。