現場の臨床検査技師の皆さんを取材する中で、最近気になっているのが名刺を持っていない検査技師が意外に多いということだ。検査室内にこもっての日常業務に追われ、必要とする機会が少ないというのが理由だとは思うが、自分の専門性や役割を伝えることで広がる人脈や交流があることを知ってほしい。
身近な地域技師会の研修会や情報交換の場であったり、認定資格取得のための学会参加など、名刺を渡す場面は少なくないように思う。所属施設以外の人とつながり、刺激を受けながら知識やスキルを学び成長するステップは、多くの臨床検査技師が描く理想のキャリアプランの一つだ。
「検査室にずっといるのだから必要ない」「若手検査技師は作っても渡す人がいない」。そんな声も聞こえてきそうだが、技師長を含めた検査技師の認識がそうだとするならば、検査のプロとしての職能が持つ可能性を狭めてしまうように感じてしまう。もっと言えば、病院勤務の検査技師がいずれ飽和するといった推計や、検査機器や人工知能の技術革新がもたらす環境変化を考えれば、検査室外にも目を向けて動き出す必要があるように見える。
まずは10枚でもいいから名刺を作って、検査室外の活動にも一歩踏み出してみよう―。より多くの検査技師が名刺を持つことで生まれる行動変容や意識の変化の積み重ねで、検査技師への社会的な認知度や評価も必ず高まってくるのではないかと思っている。(水)