〈記者コラム〉人工知能 このところセミナーや企業取材でAI(人工知能)の診断への応用について話を聞く機会が多くなった。製薬関係のセミナーでもバイオマーカー探索の観点でAIの活用が進みつつあることが報告されたりしている。 取材の中で印象に残るのは、ある大学発ベンチャーのCOO(最高執行責任者)がセミナーで「AI開発をしていく上で、頼りになる知見を持っているのは、元々ウエットでデータを触っていたメンバーだったりする」という発言。その趣旨は、AIのアルゴリズムが全て妥当な結果を導くのではなく、アルゴリズムの偏りを是正する必要があるということ。偏りを是正するには、実際に正確な結果を出すための基本的な知識や経験が必要だという認識だと思う。 AIがいろいろな仕事を奪うということが社会的にも言われることが多い。一面では正しいとは思うが、懐疑的な部分もある。AIそのものはデータの蓄積が必要で、最適化やヒトの気付きを促すことには優れていると思う。現段階では、未知の何かを生み出す力はヒトには及ばないのではないか。 翻って臨床検査から見ると、データを扱うという点では、臨床検査技師の業務を変化させることはあるかもしれないが、仕事を奪うということはないのだろうと考える。ヒトにしかできない仕事はなくならない。AIにより臨床検査業務は変貌していくだろう。ただ、AIの活用にも検査原理の理解や経験、ノウハウの蓄積といった検査技師が求められる本質はきっと変わらないと思う。(下)
このところセミナーや企業取材でAI(人工知能)の診断への応用について話を聞く機会が多くなった。製薬関係のセミナーでもバイオマーカー探索の観点でAIの活用が進みつつあることが報告されたりしている。 取材の中で印象に残るのは、ある大学発ベンチャーのCOO(最高執行責任者)がセミナーで「AI開発をしていく上で、頼りになる知見を持っているのは、元々ウエットでデータを触っていたメンバーだったりする」という発言。その趣旨は、AIのアルゴリズムが全て妥当な結果を導くのではなく、アルゴリズムの偏りを是正する必要があるということ。偏りを是正するには、実際に正確な結果を出すための基本的な知識や経験が必要だという認識だと思う。 AIがいろいろな仕事を奪うということが社会的にも言われることが多い。一面では正しいとは思うが、懐疑的な部分もある。AIそのものはデータの蓄積が必要で、最適化やヒトの気付きを促すことには優れていると思う。現段階では、未知の何かを生み出す力はヒトには及ばないのではないか。 翻って臨床検査から見ると、データを扱うという点では、臨床検査技師の業務を変化させることはあるかもしれないが、仕事を奪うということはないのだろうと考える。ヒトにしかできない仕事はなくならない。AIにより臨床検査業務は変貌していくだろう。ただ、AIの活用にも検査原理の理解や経験、ノウハウの蓄積といった検査技師が求められる本質はきっと変わらないと思う。(下)