〈記者コラム〉マイナ救急元年 マイナンバーカードを健康保険証として登録して実際に使用している人はどのくらいいるだろうか。ましてや、それを普段から持ち歩いている人はどれほどだろうか。 デジタル庁のデータによると、人口の77%がマイナンバーカードを保有し、そのうち84%が健康保険証として利用登録している。また、カードを持ち歩く携行率は保有者の5割。あまり多くない印象である。 総務省消防庁は先頃、「マイナ救急」の実証事業を2025年度に全国ほぼ全ての救急隊で行うと発表した。「マイナ救急」とは聞き慣れないが、救急隊員が搬送患者のマイナ保険証を用いて病歴や服用薬などの情報を閲覧できる仕組みである。傷病者が意識のない場合は、本人同意なしに救急隊が閲覧できる。 搬送先への連絡が早まる効果が期待できるというから、治療を受けるまでの時間が短縮され救命率の向上につながるかもしれない。だが、外出先でもその恩恵を受けるにはマイナカードを携行していることが必要だ。 2024年度に行われた実証事業では、救急搬送件数のうち、マイナ保険証の情報が実際に閲覧されたのはわずか7%。約9割のケースでは、マイナカードを所持していないか、健康保険証として登録されておらず、情報の閲覧ができなかった。 さらに、マイナカードを持っていたとしても、救急現場で有効に活用できるとは限らない。所持品検査が認められている警察官と違い、救急隊員が勝手に持ち物を調べることには法的根拠がないからだ。意識がなければ、救急隊員にマイナカードを見つけてもらえない恐れがあるのだ。 消防庁は、実証事業を全国規模で行う来年度は「マイナ救急元年と言っても過言ではない」と意気込む。制度の効果を最大限に引き出すためには、マイナカードの携行率を向上させるだけでなく、救急隊員が迅速にカードを確認できる環境の整備など、もうひと工夫が必要だ。(枇)
マイナンバーカードを健康保険証として登録して実際に使用している人はどのくらいいるだろうか。ましてや、それを普段から持ち歩いている人はどれほどだろうか。 デジタル庁のデータによると、人口の77%がマイナンバーカードを保有し、そのうち84%が健康保険証として利用登録している。また、カードを持ち歩く携行率は保有者の5割。あまり多くない印象である。 総務省消防庁は先頃、「マイナ救急」の実証事業を2025年度に全国ほぼ全ての救急隊で行うと発表した。「マイナ救急」とは聞き慣れないが、救急隊員が搬送患者のマイナ保険証を用いて病歴や服用薬などの情報を閲覧できる仕組みである。傷病者が意識のない場合は、本人同意なしに救急隊が閲覧できる。 搬送先への連絡が早まる効果が期待できるというから、治療を受けるまでの時間が短縮され救命率の向上につながるかもしれない。だが、外出先でもその恩恵を受けるにはマイナカードを携行していることが必要だ。 2024年度に行われた実証事業では、救急搬送件数のうち、マイナ保険証の情報が実際に閲覧されたのはわずか7%。約9割のケースでは、マイナカードを所持していないか、健康保険証として登録されておらず、情報の閲覧ができなかった。 さらに、マイナカードを持っていたとしても、救急現場で有効に活用できるとは限らない。所持品検査が認められている警察官と違い、救急隊員が勝手に持ち物を調べることには法的根拠がないからだ。意識がなければ、救急隊員にマイナカードを見つけてもらえない恐れがあるのだ。 消防庁は、実証事業を全国規模で行う来年度は「マイナ救急元年と言っても過言ではない」と意気込む。制度の効果を最大限に引き出すためには、マイナカードの携行率を向上させるだけでなく、救急隊員が迅速にカードを確認できる環境の整備など、もうひと工夫が必要だ。(枇)