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〈インタビュー〉石田秀和さん(岐阜大学医学部附属病院検査部副臨床検査技師長)「業務軽減につながるAIツールを知ってほしい」


 インタビュー「きらり臨床検査技師」は検査技師としての本来業務だけでなく、所属施設外で精力的な活動を行っている方、興味深いテーマや研究に打ち込んでいる方、ユニークな資格や経歴を持つ方など、編集部が“きらり”と感じた検査技師を紹介します。(MTJ編集部)

 

 大学病院検査部の副臨床検査技師長としての役割を果たしながら、膨大なデータから役立つ情報を導き出す「データサイエンス」の研究に取り組んでいる。聞き慣れない言葉だが、日々得られる検査データから診療に役立つ知見を導き出すアプローチは、検査領域でのさらなる活用が見込まれる人工知能(AI)などを支えていくデータ加工技術の一つだ。

 一昨年、代表幹事を務める「Laboratory Data-Science研究会」を立ち上げ、検査領域でのデータサイエンス技術に関する情報発信の場も整えた。多くの臨床検査技師に伝えたいのは、この技術を応用したAIツールが「日常業務の負担を軽減できること」。臨床検査技師は、進化し続ける技術革新をどのように役立てることができるのか、自身のキャリアを振り返りながら語っていただいた。

 

―これまでのキャリアと、データサイエンスに興味を持つきっかけなどを教えてください。

 学生時代から臨床検査技師になりたいといった特別な思いがあったわけでなく、安定した医療職に就きたいなという考えの中で臨床検査技師という職種を知りました。理系の知識もほとんどなかったので大学時代は苦労しましたが、藤田保健衛生大学(現藤田医科大学)を卒業後、岐阜大学医学部附属病院検査部に入職し、生化学、免疫、輸血を中心に担当してきました。データサイエンスへの興味ですが、20代の頃から膨大な検査データを使って何か新しいことが発見できるのではないかという思いはあったのですが、実現するためのノウハウもスキルも当時はありませんでした。

 大学病院で経験を積んでいく中で、自身の研究実務のスキルを高めたいと思うようになり、数年前から藤田医科大学大学院に通い、コロナ禍が落ち着き始めた頃に卒業しました。データサイエンスに本格的に興味を持ち始めたのは大学院の頃です。岐阜大学病院を離れていたのですが、データサイエンス技術を学び、その面白さを感じる中で、やはり臨床現場で得る知識や経験が大事だと考え、2023年4月に岐阜大学病院に戻って今に至ります。

◆ 技術活用できる人材が育つ土壌を

―データサイエンスの考え方と、Laboratory Data-Science研究会の活動を教えてください。

 データはよく「新しい石油」に例えられます。集めたデータは石油と一緒でうまく加工しなければ役に立たないという意味ですが、原油と同じように地下の「どこにあるのか」「どうやって掘り出すのか」「どのように加工するのか」「何ができるのか」を考える必要があります。データサイエンスという言葉は難しい印象を与えるかもしれませんが、簡単に言えば、さまざまな検査データから、統計学やプログラミング、医学知識などを駆使しながら役立つ情報を導き出して、臨床判断をサポートしていくイメージです。


 研究会を立ち上げたきっかけは、データサイエンスの技術を学んでいく中で、検査領域での研究が少ないと思ったからです。データは集めるだけでなく、分析できるように蓄積、加工しなければならないのですが、こうした部分が苦手な臨床検査技師が多いとも感じていました。研究会では、この分野に関心を持つ仲間と情報発信しながら、多くの臨床検査技師に興味を持ってもらえるような活動を進めていきたい。検査領域で応用するためのスキルやノウハウを広く共有し、この技術を活用できる人材が育つ土壌が生まれればと思っています。


◆ ChatGPT、自己学習の補助ツールに

―データサイエンス技術を生かしたChatGPTなども注目されています。

 ChatGPTで臨床検査技師国家試験を正答できるか試したところ、無料版の「3.5」では5割、有料版の「4」では8割です。明らかに発展途上であることは触れてみれば分かりますが、多くの臨床検査技師が日常で使える場面も多いのかなと思っています。

 例えば、ChatGPTで興味がある学術論文を要約してもらったり、海外文献の翻訳などをお願いしてもいいかもしれません。自己学習の補助ツールと捉えるイメージです。こんなテーマで話をしてみたいと言えばストーリーを整理してくれますし、メールの返信文やいろいろなメッセージ、文章を整えてもらえる。臨床検査技師の中には、コミュニケーションが得意でないという方もいるかもしれませんが、ちょっと苦手かなと思うようなことやトラブルが起きた際などにアドバイスやアイデアをもらえるツールといえば関心を持ちやすいでしょう。そんな気持ちで使ってもらえれば、それぞれが置かれている立場や状況で、利用できる場面のイメージが湧いてくると思います。

―病院検査部、研究会活動と忙しい日々ですが、休日などにどのように気分転換されていますか。

 趣味と呼べるものがないのが悩みで、やはり息抜きの方法を見つけないといけないですよね。研究会の活動は、病院検査室での役割とは別のものになるので、ある意味、趣味かもしれないですが、この活動を通じてさまざまな業界の方とのつながりができていることが今は楽しいです。医療分野だけでなく、展示会やセミナーであったり、AIというキーワードでつながった方々から刺激を受ける機会が増えてきました。臨床検査技師は病院内でも、比較的交流が少ない職種のような気もしますが、他業界の方々と交流する機会があれば、それも面白いのではないかと思います。

◆ AIツール「業務を楽にしてくれる」

―臨床検査技師の皆さんへのメッセージをお願いします。

 将来的な活用は見込まれますが、検査領域でのAI活用では課題も多く、臨床検査技師が持つ知識や経験の方が明らかに優れていることはすぐに分かります。一方で、こうしたAIツールを使えば、今でも日常的な業務負担の効率化や軽減につなげることができる。忙しい臨床検査技師の日常業務を「楽にしてくれる技術」が日々進化していることを知っておく意味はあると思います。

 研究会のメンバーには起業している人もいますし、データサイエンス技術に関する活動の成果として、検査室の実務に役立つようなツールを開発できればとも思っています。データサイエンス技術が、AIなどの利活用の促進を通じて、検査室や臨床検査技師の未来の可能性を広げることにつながっていけばうれしいですね。

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