〈インタビュー〉大西秀典さん(福井大学医学部地域医療推進講座講師)「興味あるものを追求する」【動画あり】
- mitsui04
- 6月23日
- 読了時間: 6分

インタビュー「きらり臨床検査技師」は検査技師としての本来業務だけでなく、所属施設外で精力的な活動を行っている方、興味深いテーマや研究に打ち込んでいる方、ユニークな資格や経歴を持つ方など、編集部が“きらり”と感じた検査技師を紹介します。(MTJ編集部)

福井大学医学部地域医療推進講座講師の大西秀典さんは、災害医療と地域医療をテーマにさまざまな研究に取り組んでいる。災害医療では、被災地で下肢静脈超音波検査を通じた深部静脈血栓症(DVT)の調査で複数の論文を執筆。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行時には福井県内の感染者のデータ解析に携わった。
臨床検査技師資格を持つ研究者として活躍する大西さんは、養成学校卒業後に病院に入職し、キャリアのスタートを切った。興味を持ったことには学びを深め、超音波検査士(循環器領域)などの認定資格を取得。さらに研究したいテーマを見つけて、大学(学士)を経ずに大学院に進学したという経歴の持ち主だ。大西さんは現在、クリニックで超音波検査に携わるとともに、医学部医学科において医学生・研修医・若手医師に対して超音波検査の教育や研究論文の指導にも力を注いでいる。キャリアの転機となった出会いや出来事などについて話を聞いた。
◆技師養成学校で知った「学ぶ楽しさ」
―病院で15年ほど経験を積んだ後、大学院博士課程に進学され、現在は主に研究者として活躍されています。これまでのキャリアを振り返って、転機となった出来事を教えてください。
子どもの頃は昆虫やザリガニ採りに夢中になっていて勉強は全くダメ、成績表には、ちょっと見なかったことにしたい数字が並んでいて…今思えば、かなり個性的でした(笑)。当時は勉強する意味や面白さは全く分かりませんでした。高校生になって、進路を考える時期に、唯一好きだった生物系の方面へ進みたいと思っていました。なんとなく「顕微鏡を使う仕事がしたい」と思い始め、顕微鏡を使う仕事の中に、細胞検査士という資格があることを知りました。まずは臨床検査技師になる必要があることも知り、臨床検査技師を養成する専門学校への進学を決めました。
専門学校に入学して初めての試験で勉強する楽しさを感じる転機がありました。病理検査の写真を用いた問題が出題され、80人程の学生の中で上位に入ったんです。学内に成績を張り出され、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。小学校から高校まで成績はずっと底辺だったので、本当に嬉しくて(笑)。自分が興味を持ったことを学ぶという事は苦にならないことが分かったんです。人生で初めて「学ぶことは楽しい」と思った瞬間です。
◆超音波検査で研鑽
養成学校を卒業後、病院に入職し、生理機能検査の部署に就くことになりました。心電図や超音波、肺活量、脳波検査などを中心に経験を積んで、超音波検査士(循環器領域)や血管診療技師などの資格の取得をしました。臨床現場では医師とディスカッションしたり、信頼を置いてくださり直接指名で検査を依頼されたりすることが増えていき、やりがいも出てきていました。
また自分が興味を持ったものは追求するタイプで、関連書籍を読んだり、執筆者に直接連絡を取って話を聞いたり、研修会や学会に参加し積極的に活動するようになっていきました。
その頃、研究者の道へと導いて頂ける出会いもありました。2011年に東日本大震災があり、その後も地震や台風など国内で災害が頻発していた中、緊急臨床検査士や認定救急検査技師などの資格も取得していて、災害医療にも関心を持っていました。ある学会で災害医療や地域医療を専門とされている山村修先生(福井大学地域医療推進講座教授)と出会いました。
病院検査部の仕事は一人一人の患者に向き合うものですが、災害医療や地域医療の研究は被災者や地域住民などより多くの人を対象にします。私は超音波検査で災害医療支援ができないかと考えていたのです。そのような思いを山村先生にお話ししたところ、「大学で研究してみたら」と言っていただきました。一定の条件を満たせば大学院へ進学できる制度があることも教えていただき、福井大学大学院へ進学することを決意しました。
―研究職のどのような点に惹かれたのでしょうか。大西さんが現在、手がけている研究についても教えてください。
超音波検査で積んできた経験を生かして、地域医療や災害医療の研究がしたいという思いがありました。研究テーマの一つにしているのが、避難所でのDVT検診に関するデータ収集と解析です。データを検証して論文にまとめ、DVTの有用性を示すエビデンスをつくることに力を注いできました。
また、私が所属している福井大医学部地域医療推進講座と福井県が連携していることもあり、新型コロナウイルス流行期には県内感染者のデータを解析する仕事に携わりました。感染者の重症化の因子とされていた喫煙に注目し、感染者の投薬治療を始める判断の指標として、一日に吸うたばこの本数と喫煙年数をかけた指数が使える可能性を示しました。
