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〈レポート〉ドローン検体搬送、進む実証実験 筑波大病院・TiLL・KDDIなど【動画あり】


 茨城県つくば市で、ドローンによる検体搬送の実用化に向けた実証実験が進んでいる。検査室を持たない診療所で採取された検体を、ドローンを使って検査機関に搬送して迅速に検査することを目指した試みだ。筑波大学附属病院や、つくばi-Laboratory LLP(TiLL)などによる検証では、医療機関から約200m離れた検査機関までの間を30分以内で運び、搬送中の振動による検体への品質異常は確認されなかった。実用化への当面の課題は、ドローンそのものの機体改良や運航管理上のルール緩和で、こうした動向を見ながらの検証が継続的に行われる計画となっている。

 
筑波大学附属病院

 ドローンによる検体搬送の取り組みは、内閣府の「スーパーシティ型国家戦略特区」であるつくば市内で実施。規制改革を通じた先端的サービスの実現を目指す構想に基づき、つくば市や筑波大病院、TiLL、KDDI、KDDIスマートドローン社などによって進められている。


 検査室のない診療所にとって検体採取から測定までをいかに早めるかは課題だが、検査センターによる車での集配は昼夕2回など、決まったルートに基づいて行われており、検査結果は翌日以降になるのが一般的だ。交通状況に左右されないドローンでの検体集配が実現できれば、至急検査が必要な検体をドローンで検査機関に持ち込み、結果報告までのスピードを早められる。


 社会実装を目指した取り組みが進む中、昨年10月の第55回日本医療検査科学会では、ドローンによる検体搬送に必要な一連作業を含めた搬送時間の検証や、搬送時の振動が品質に与える影響などを探ったデータが報告された。


要請から検体搬入まで「26分」


TiLL

 搬送時間の検証は、TiLLと、そこから200m離れた筑波メディカルセンター病院の間で行われた。一連の流れはこうだ。病院からの連絡を受けてTiLLがドローンの運航や空き状況などを確認し、病院に連絡した後、搬送ボックスを取り付けてドローンを飛ばす。ドローンはあらかじめプログラミングされた航路を飛行して病院に向かい、病院で検体を積み込んでTiLLに戻る。TiLLで検査が開始できるまでの時間は26分だった。


 実証実験に携わったTiLLの永井友和氏は、「病院の診療部門で検体採取して、院内検査室で検査するのと大きく変わらないくらいの時間だ。ドローンを使って迅速な検査ができれば、災害発生時や離島等の検査ニーズに応えることも含め、地域医療に貢献できる可能性が高い」と話す。


Ct値変化量は問題なし


草間氏(左)と永井氏(右)

 ドローンの振動が検体に与える影響では、新型コロナウイルス陽性と判定された匿名化検体60件(唾液30件、鼻咽頭拭い液30件)を対象に、ACSL社のドローン「PF2」のドローン「積載前」と「積載後60分飛行(ホバリング)」の検体のCt値をそれぞれ調べたデータが報告された。


 結果を見ると、飛行前後のCt値変化量は唾液検体でマイナス1.4~0.98、鼻咽頭拭い液検体でマイナス1.47~1.46で大きな影響を受けたと考えられるものはなかった。ドローンの搬送ボックス内の温度変化も12~15度と著しい変化はなく、重量加速度は一般的な車の通常走行よりも小さい結果となった。


 また、健常人のボランティア採血検体への溶血の影響を探ったデータでは、室温放置した検体測定値を基準に、ドローン飛行(ホバリング)した検体を相対比で評価したところ、溶血による血算や凝固、血糖管などへの明らかな品質異常はなかった。


 昨年11~12月には、TiLLと、近隣の2施設を経由して片道1.1kmの距離で検体搬送を行い、KDDIが持つ人流データ等を活用しながら、リスクの低い飛行ルートを選択して安全に搬送できることも確認した。実証実験に携わる筑波大病院感染症科の草間智香氏は、「ドローンでの定期的な検体搬送を想定し、運航方法や検体の搭載方法、スマートフォンとのデータ連携などの実証実験をさらに進める」と説明。将来的にはレベル4飛行(有人地帯での補助者なし目視外飛行)による事業化を目指す計画となっている。


 現在までに実施されたドローン搬送を巡る一連の動画は、KDDIスマートドローン社がユーチューブで公開している。





 待たれるドローン機体の進化


 筑波大病院やTiLLなどによる実証実験が続けられる一方で、課題になっているのが、より優れた性能を持つドローンへの機体改良だ。実証実験で使われているACSL社のドローンPF2は、雨風といった天候に運航が左右されることや、採血検体を積載した場合の飛行時間が15分程度なのが現状。世界レベルでのドローンの機体改良の研究は進んでいるが、安定的な検体搬送には機体、バッテリーなどの面でのさらなる技術革新が待たれる状況にある。ドローン運航に関するルールも、機体性能の進化に見合った形で緩和される可能性が高く、こうした規制動向を見ながらの検証が進む見通しとなっている。


 実証実験を積み重ね、検体搬送を巡る物理的、時間的な課題が解消されていくことで、「検査室を持たないクリニックでも、同じ施設内にある検査室に検体を出している」ような未来の診療所のイメージが少しずつ見えてくる。人工知能や検査機器の技術革新が注目されがちな検査業界だが、ドローンがもたらす検体搬送革命への土壌も確実に整い始めている。

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