〈レポート〉#18 ISO運用をグループ内で横展開 JA北海道厚生連 旭川厚生病院
- kona36
- 6月9日
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JA北海道厚生連(北海道厚生農業協同組合連合会)は旭川、帯広、札幌の主要3病院を中心に、グループ病院検査部門の品質管理業務(QMS)を向上させる取り組みを進めている。ISO 15189を取得した帯広厚生病院のQMS業務の枠組みを横展開する試みで、各病院担当者で組織する「品質管理者会議」で情報共有しながら検査部門全体の底上げを図っている。ISO関連業務のノウハウを持つ人材育成や、グループ内のQMS業務のさらなる効率化、統一化などを進める計画だ。
JA北海道厚生連は道内に病院、診療所など15医療機関を構えるグループで、所属する臨床検査技師は約120人。総合病院は6カ所で、規模の大きい旭川厚生病院(406床)、帯広厚生病院(651床)、札幌厚生病院(516床)のほか、中小規模病院として遠軽厚生病院(160床)、網走厚生病院(199床)、ニセコ羊蹄広域倶知安厚生病院(199床)がある。

検査部門の品質管理の取り組みとしては、帯広厚生病院検査部門が2018年にISO 15189を取得。同病院のQMSの運用スキーム等を基盤にしながら2021年には旭川厚生病院、2024年には札幌厚生病院が認定を取得し、継続的な品質管理、改善を行う体制を整えた。
◆「品質管理者会議」で議論重ね
ISO対応を中心としたQMS業務の仕組みでは、北海道厚生連臨床検査技師会(厚臨技)役員会から派生した品質管理者会議を2023年5月に立ち上げ、各施設の担当者をメンバーに定期的にオンライン会合を重ねている。会議で取り上げるテーマは、ISO関係の審査報告書や指摘事項、是正内容のほか、医療安全関係では是正報告書、リスクアセスメント記録、リスクマネジメント記録など。スタッフ改善提案書や利用者評価記録、内部監査報告書も共有し合い、検査部門全体のレベルアップを促す仕組みとして機能し始めている。

QMS業務の改善事例では、同じ生化学検査装置2台の機器間差の測定で、管理試料ではなく実検体で行うよう求める指摘があった。この指摘事項をグループ内で共有し、生化学だけでなく各分野の機器・機種間差の測定まで実検体で測定するよう運用を変更。また、診療部門への結果報告遅延の対応が不十分との指摘があり、連絡体制の運用見直しを徹底したことを共有した。他施設でも苦情等への対応フローの再確認や、診療に与える影響等の再教育などのリスクマネジメントにつなげた。

◆ISO業務、7割が負担感
ISO対応をベースとする取り組みが一定成果を上げる一方で、認定維持に伴う業務負担が大きいという課題にも向き合っている。全6病院の臨床検査技師にISO関連業務の負担を尋ねた意識調査(2024年2~3月)では、「かなりの負担」は52%、「多少負担」15%で約7割が負担に感じていた。「わからない」も23%あるが、ISO未取得3病院の検査技師が回答している可能性が高いため、取得施設の検査技師に限って見れば約9割が負担感を感じているのが実態だ。

また、認定取得3病院の負担感を見ると、認定取得から日が浅い施設ほど、負担に感じる割合が高かった。負担内容では細かい記録類や申請、書類作成、事務作業の増加を挙げる声や、時間外業務の増加、偏った人材への業務負担増を課題に挙げる意見もあった。ISOの取り組みが重要と思うかと尋ねたところ、現実的な負担増を考えると、「どちらとも言えない」という回答も約4割あった。理由には「コストや人員削減を目指す経営側と合致していない」「品質、精度保証のメリットは大きいが負担が大きく一長一短」などの意見が寄せられた。
北海道厚生連では転勤制度があり、数年おきに病院間を異動するため、ISOの担当者が異動先のQMS活動に関わることで、グループ全体の底上げが期待できる。ただ、現状では、リーダー的な人材が異動し、ISO対応がスムーズに回らなくなってしまうことのデメリットの方が大きいという。ISO関連業務のノウハウを持つ人材の育成や、運用面のさらなる統一化、効率化が求められている状況だ。
◆マルチサイト認定を視野
北海道厚生連では今後、病院経営層が求めるコスト、人員削減への対応や、ISO関連業務をグループ内でより効率的に運用するため、同じ母体であれば複数病院が共同申請できる「マルチサイト認定」を視野に検討する。現時点では認定取得している3病院でのマルチ申請の方向で、ISOの更新手続き等のタイミングを見極めた準備に入る。品質マニュアルや文書番号の共通化や、文書管理システムの一本化などを段階的に進め、受審費用削減や業務負担の軽減などにつなげたい考えだ。
ISO未取得の遠軽、網走、倶知安の3病院については、取得すれば国際標準検査加算等のメリットはあるものの、ISO維持に必要な経費や業務負担をトータルで考えると、取得メリットを明確に見いだしにくい現状にある。マルチサイト申請に加える選択肢もあるが、QMS業務での要求事項がより厳格化されるため、現実的に対応が可能かを慎重に検討する。また、今秋にもISO 15189の日本産業規格(JIS)が制定されることもあり、こうした動きが活用可能かも並行して協議する。
◆「グループとしての強固なQMSに」
