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〈サクッと解説〉#06 7月の参院選 日臨技の政治団体の現状は

  • kona36
  • 6月9日
  • 読了時間: 4分

 日本臨床衛生検査技師会の政治団体(日本臨床検査技師連盟:日技連)が活動を強化する方針です。7月の次期参院選での独自候補擁立は断念しましたが、近い将来、臨床検査技師資格を持つ候補を出す機運を高めていくのが狙いです。青年部の立ち上げや学生会員の創設、さまざまな勉強会やイベントなどの新たな取り組みを活性化させ、連盟組織の建て直しを急ぐ構えです。

 政治や選挙、投票という言葉を聞くと、抵抗感を感じる臨床検査技師も少なくないと思いますが、医療分野に限らず、世の中にあるほぼ全ての職能団体や業界団体それぞれが自分たちの利益を守り、存在価値を高めるための政治連盟を持っています。医療職では日本医師会の日本医師連盟、日本看護協会の日本看護連盟などのほか、薬剤師や理学療法士らも同じように連盟組織を持ち、政治への働きかけを強めています。

 医療現場のルールや仕組みは、主に厚生労働省の審議会での議論を踏まえて法案がまとまり、与党内の審査を経て、国会で審議し成立する流れが基本です。ただ、これら一連の検討過程では、関連する職能団体を代表する国会議員との濃密な調整が行われており、彼らを通じて、各団体の思惑が色濃く反映されているのが現実です。規制色が強く、さまざまな専門職が複雑に支え合っている医療業界では特に、それぞれの主張を代弁する与党の国会議員による制度政策への関与の度合いが高くなっています。

 日技連の組織内候補で参院議員を1期務めた宮島喜文氏(前・日臨技会長)が2022年参院選での出馬を断念して以降、臨床検査技師資格を持つ国会議員はいません。宮島氏の在任中は臨床検査技師が関連する2度の医療法改正が行われましたが、今では日技連が医療政策全般に関与できる機会はほぼなくなり、他の医療職に比べると影響力が急激に落ち始めているように見えます。

「1票投じたか」を調査へ
 
 日技連は今回の参院選で、独自候補を出せませんでしたが、全国47都道府県技師会の協力を得ながら、それぞれの会員が参院選投票に出向いたかを調べる方針です。7万人を超える会員のうち、どの程度の会員が国政選挙で1票を投じたかの実態は、潜在的な選挙態勢の可能性を示すバロメーターとなります。3年後の参院選で、臨床検査技師が団結して組織内候補を擁立できるかの試金石になりそうです。


 参院選の仕組みをしっかり理解していない方もいると思うので、ここで投票の流れをざっくりと説明したいと思います。
 
 参院選の選挙方式は「選挙区」と「比例代表」の2種類があり、まずは都道府県単位(原則)となっている選挙区での候補者名を書いて投票します。もう1つが全国単位での比例代表選挙で、こちらは政党名でも候補者個人名でも、どちらを書いてもOKというのが大きなポイントです。全国どこからでも、個人名を多く書いてもらった順に当選が決まるので、全国に関連組織を持つ職能団体の強みを生かしやすく、各団体の組織代表として立候補するいわゆる「組織内候補」が多く出てきます。知名度の高いタレント候補が話題になる理由でもあります。

 日技連が目指している理想を平たく言えば、臨床検査技師を代表する組織内候補の「A氏」が比例代表選挙に立候補した際、多くの臨床検査技師とその家族、そして周りの方々に「A氏」の個人名を書いてもらえるような土壌づくりです。目指すビジョンが明確な一方で、大きなハードルになっているのが政治活動の原動力となる会員の伸び悩みです。どんなルールや仕組みを作り変えるにしても、それらを要望する声(会員)がどの程度あるかどうかが物事の優先順位に直結します。日技連の現状を見ると、会員7万人を超えた日臨技の政治団体でありながら、加入口数は1551口まで落ち込んでいます。厳しい言い方になりますが、たとえ組織内候補を出せたとしても当選の可能性は限りなく低い状況にあるわけです。

 当たり前のことですが、選挙で誰に投票するか、投票に行くか行かないかも含め、国民一人一人の自由です。ただ、臨床検査技師目線で現場のルールや仕組みをより良い形に変えながら、給与待遇改善も含めた皆さんの未来を切り開いていくための国会議員の必要性について、いかに多くの臨床検査技師に共感してもらえるかが日技連には強く問われています。医師や看護師、薬剤師、理学療法士らが参院選で組織内候補を安定的に当選させている一方で、臨床検査技師が取り残されているといったら言い過ぎでしょうか。

検査技師目線での解説動画

 MTJメールニュースサイトでは、臨床検査技師の皆さん向けに、政治や選挙の仕組みをわかりやすく解説する計3回シリーズの動画を公開しています。1〜2回は公開済みで下記で視聴できます(3回目は6月下旬公開予定)。

 
 日技連の青年部長を務める神戸翼氏(永生総合研究所所長)に協力していただき、ちょっとした仕事の合間でも視聴できる数分の内容に仕上げています。参院選を来月に控え、少しでも多く臨床検査技師の皆さんが、政治や選挙との向き合い方を改めて考える機会になればうれしいです。(水)

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