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〈記者コラム〉能登地震から考えたこと

 能登半島地震から4カ月が経過した。発災10日後からDMATチームとして輪島市で活動した国立病院機構埼玉病院産婦人科部長の服部純尚氏は、この災害の特徴を3つ挙げている。1つは、奥能登に向かう道路が1本しかなく、交通アクセスの困難さから初期の支援活動が思うように進まなかったこと。2つ目は、上下水道が広範囲に止まり、被災者の生活だけでなく支援活動にも影響したこと。一部の地域ではいまも断水が続いている。もう1つは、被災地が高齢者の多い医療過疎地であったことだ。服部氏は「災害支援の医師が入ると普段よりもだいぶ便利な状況になり、もう少し(いてほしい)というニーズが出てきた」と、支援医療が普段の医療を上回ったことを指摘している。

 産婦人科領域では、分娩取り扱い施設が奥能登に2施設しかなく、多くの妊婦は普段から七尾市まで時間をかけて通院した。妊娠34週の輪島市内の28歳女性も、損壊を免れた自宅にとどまり、2時間をかけて妊婦健診に通っていたという。もともと地元に分娩施設がなく、通院に時間がかかるのは地震の前後でも変わらないのである。

 奥能登は、少子高齢化や常勤医師数の減少が進み、地域医療体制の維持に課題を抱えていた医療圏である。全ての疾患の入院・外来のニーズが減少し、地元の病院からも医療機関の集約化やダウンサイジングを求める意見が出ていた。その地を襲った今回の地震で、地域医療を支える医療スタッフの人手不足はさらに進むだろう。これからの医療提供にいくつもの課題があることは想像に難くない。

 85歳以上人口が増え、一方で生産年齢人口が急減する今後、奥能登のような医療課題を抱える地域が全国で増えていくに違いない。元日の地震が示したことの一つは、これからわれわれも同じような医療課題に向き合わなければならないことではないか。(枇)

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