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〈インタビュー〉杉原明美さん(あんず会杏クリニック)「在宅医療に携わる仲間を増やしたい、チャレンジを」


 インタビュー「きらり臨床検査技師」は検査技師としての本来業務だけでなく、所属施設外で精力的な活動を行っている方、興味深いテーマや研究に打ち込んでいる方、ユニークな資格や経歴を持つ方など、編集部が“きらり”と感じた検査技師を紹介します。(MTJ編集部)

 

 在宅患者への医療や、緩和ケアに注力しているあんず会杏クリニック(埼玉県狭山市)の杉原明美さんは、病院検査部に2年勤務した後、在宅医療の現場に飛び込んだ。在宅患者を訪問し、医師の診療補助や採血、臨床検査などを行う日々を送る。

 高齢化の進展を背景にニーズが高まる在宅医療で、臨床検査技師はどのように貢献できるのか。杉原さんが今の仕事に携わることになったきっかけ、現場で患者と接する中で気付いたこと、在宅医療における臨床検査技師の可能性などを語っていただいた。

 

スポーツ栄養学から臨床検査へ


―現在の仕事と、これまでのキャリアを教えてください。

 在宅医療、緩和ケアなどを中心とする杏クリニックに臨床検査技師として勤務しており、今年で7年目になります。クリニックでは医師1人と、臨床検査技師や看護師などの「アシスタント」1人が2人体制でチームを組み、1日当たり10~12件、患者宅を訪問しています。採血や検査、カテーテルの交換補助、体位変換などが私の主な業務です。アシスタントは月曜から日曜までシフトを組んで対応しています。


 臨床検査技師を志したのは、実は大学に入ってから。高校時代はサッカーをしていて、スポーツ栄養学を学びたいと考えて女子栄養大学に進学しました。大学で栄養学だけでなく臨床検査学も学ぶうちに、医療に関わる分野に興味が湧き、臨床検査技師になる道を選びました。


 臨床検査技師としてのキャリアは、大学卒業後、日本医科大学多摩永山病院に就職しました。一般検査、生化学検査、血液学検査のローテーションがあり、夜勤も経験しました。病院検査部に2年勤務した後、開業してまだ間もない杏クリニックに2017年に転職しました。


◆相手の顔が見える仕事がしたい


―もともと在宅医療に関心があったのですか。

 新卒で入った大学病院検査部では、検査について学ぶことが多かったのですが、2年目を迎えて業務に慣れてきた頃から、自分の中で葛藤を感じるようになりました。病院検査室では患者の氏名や検査数値は見ても、患者の顔を見る機会はほとんどなく、どんな方なのかは分からないままです。私は人とコミュニケーションを取るのが好きなので、相手が見えない状態で仕事をすることに少しもやもやした気持ちを抱えていたのだと思います。


 2016年ごろ、杏クリニックの理事長から在宅医療に力を入れたクリニックを始めるという話を聞きました。在宅医療には以前から関心がありましたし、転職を決めました。


 私の母がケアマネジャーをしており、在宅の高齢者にさまざまなケースがあることを知っています。例えば、ゴミを一人では片付けられずためてしまう方、家族に囲まれて穏やかに過ごされている方がいます。在宅医療への転職について母に相談した時には、大学病院という安定した職場を離れることについて心配もされましたが、最終的には「あなたが後悔しないなら、やってみなさい」と背中を押してもらいました。


―在宅医療の現場に入ってみて感じたことはどんなことでしたか。

 振り返るといくつかの壁にぶつかりましたが、一番大きかったことは多職種との連携が強く求められるということでした。病院では医師の指示に基づいて多職種の業務が進んでいくことが多いと思いますが、在宅医療では、医師が他の職種に合わせて当初の予定を変更することもあります。私は病院勤務経験から、クリニックの医師の予定が優先で、他の職種が医師に予定を合わせるのが当然だと思い込んでしまい、他の事業所との連携がうまくいかなかったことがありました。


 患者の身体に触れる機会が多くあるのも在宅医療の特徴です。病院勤務時にはあまり経験できなかった生理検査を実施する機会が増えました。医師の診察の際に、患者の身体の向きを変えるのをお手伝いをすることがあります。慣れないこともあり、最初はうまくできないこともありましたが、医師や看護師にサポートしてもらいながら対応できるようになりました。


◆在宅に携わる仲間を増やしたい


―在宅医療に携わる臨床検査技師はまだまだ少ないです。在宅医療に関心を持つ方に伝えたいことはありますか。

 在宅医療というと、まず“大変そう”と言われることが多いです。もちろん最初は慣れないこともありますが、臨床検査技師として在宅医療に携わることはとても楽しく、やりがいを感じています。在宅医療では、患者一人一人に対する医師の診断、治療といった一連の過程を見ていくことができます。医師から直接、診断根拠や処方薬の変更理由などを聞く機会も多くあります。


 在宅を訪問すると、患者の暮らしぶりが見えますし、家族を含め、患者を取り巻く環境の一端も捉えることができます。在宅医療で活躍する臨床検査技師はまだ多くないですが、臨床検査技師の存在感を示せる分野だと思っています。携わる仲間をぜひ、増やしていきたいです。


―うまくいかない時、ストレスを感じた時はどうしていますか。

 フットサルをしたり、サウナに行って汗をかいたりしています。小説など読書する時間もつくるようにしています。


 自分の中で何か気になることがあり、問題だと感じた時は、紙とペンを手に取り、問題の構成図を描いて整理するようにしています。問題だと感じていることを紙の真ん中に書き、それに関係している事柄、そのために使っている時間などを周囲に文字や図、線などで書いていきます。問題を構成している要素が何か、それぞれの要素の比重などを図にして眺めることで整理ができる気がします。


―若手の臨床検査技師に向けたメッセージをお願いします。

 4月から社会人になる臨床検査技師の方も多いと思いますが、まずは最初の職場で2~3年頑張ってみてほしいです。どんな人でも最初は失敗することが多いですし、その経験がその後の糧になります。また、他の医療職種の人と話す機会をつくることをお勧めしたいと思います。臨床検査技師とは違った視点や、物事の考え方を知ることができる。さまざまな方から刺激を受けて、自分の本当にやりたいことが出てきたのであれば、そこにチャレンジしてほしいですね。

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