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〈インタビュー〉東影明人さん(岡山大学病院医療技術部臨床検査技師長)「CRC、精度の追求が得意な臨床検査技師は活躍できる」


 インタビュー「きらり臨床検査技師」は検査技師としての本来業務だけでなく、所属施設外で精力的な活動を行っている方、興味深いテーマや研究に打ち込んでいる方、ユニークな資格や経歴を持つ方など、編集部が“きらり”と感じた検査技師を紹介します。(MTJ編集部)

 
 新薬開発の重要なステップである治験では、治験実施計画書(プロトコル)や厚生労働省令(GCP)などの順守が求められる。治験に携わる臨床検査技師は、医師や看護師など他職種との連携はもちろん、治験を依頼した製薬企業関係者や、治験に参加する被験者など多様な人に対応する必要がある。
 岡山大学病院(岡山市)の東影明人さんは、院内で心電図検査や微生物検査などを担当した後、治験推進部に配属。被験者に接する機会も多い臨床研究コーディネーター(CRC)として検査室内業務とは異なる経験を積んだ。現在は医療技術部検査部門の臨床検査技師長として臨床検査全般を統括管理する役割を担うが、CRC時代に強く感じていたコミュニケーション力の重要性を改めて感じているという。東影さんに、院内の臨床検査業務と治験関連業務の違いや、CRCとして臨床検査技師が活躍できる可能性、求められるスキルなどについてお話しいただいた。
 
◆心電図や微生物検査を経験後、治験推進部へ

―臨床検査技師になったきっかけを教えてください。
 兵庫県姫路市で生まれ、物心ついた頃には、父が車椅子を使っていました。そんな父の姿を見ていて、将来は医療の方向へ進みたいと思っていた気がします。

 高校卒業を控え進路を選ぶ時期になり、同級生には看護師や診療放射線技師を選んだ友人もいたのですが、私は臨床検査技師を選びました。なぜ、臨床検査技師を選んだのか。特別な理由があったわけではないですね。その時は、なんとなく臨床検査技師が良さそうだと思った程度で、業務内容を詳しく知りませんでした。

 岡山大学の臨床検査技師養成課程は現在、医学部の保健学科・検査技術科学専攻になっていますが、私の時代はまだ専門学校でした。岡山大学医学部附属臨床検査技師学校が短期大学部になる前の最後の年に入学しました。卒業して1989年に岡山大学病院に入職しました。
―臨床検査技師としてのキャリアは、どのように形成されてきましたか。治験に携わることになった経緯も教えてください。
 最初に担当したのは、呼吸機能検査と心電図検査です。今から35年ほど前ですから、感熱紙の上を熱ペンが動いて心電図の波形を記録する検査機器を使っていました。波形が書かれた用紙を見て、診断に役立ちそうな範囲を切り取って台紙にのり付けし、それをもとに医師が診断をつけていましたね。今と比べると用手法がかなり多く、臨床検査技師が自分の目で見て、考えて作業しなければならないことが多かったです。

 心電図を10年ほど経験した後に配置転換となり、微生物検査を担当しました。微生物検査でも、培地を用いて微生物を分離培養し、コロニーの中から感染症の起炎菌を探す過程では、臨床検査技師が自分の目で見て判断する力が問われます。こうした面は、業務に携わる中で鍛えられた気がします。

 岡山大学病院は1999年に治験センター(現・新医療研究開発センター治験推進部)を設置し、全国の大学病院の中でも積極的に治験を推進してきました。治験推進部には臨床検査技師2名が配属されていたのですが、そのうち1名が退職することになり、代わりに私が入ることになりました。心電図と微生物を経験して、41歳で新たに治験業務に挑戦することになったんです。
◆企業関係者、被験者など多様な人と関わる機会に

―治験関連業務に携わって、どのようなことを感じましたか。
 創薬につなげる治験は、薬剤の有効性や安全性を確認する目的で実施します。その評価項目に臨床検査の結果が使われることがあるので、プロトコルに沿った臨床検査の実施や精度管理が非常に重要視されています。

 岡山大学病院の治験推進部では、院内CRCとして薬剤師、看護師、臨床検査技師の3職種が仕事をしています。他職種と一緒に仕事をする中で、精度管理については知識や経験のある臨床検査技師が頼りにされる場面が多くありました。また、臨床検査技師は日常的に検査の数値を見ていて、それらのデータを扱うことに慣れている点も、CRCとして仕事をする上で強みになると思います。
―治験ならではの業務の注意点などはありますか。
 治験のプロトコルでは、投薬して何分後に検査を実施するかなど、スケジュールや検査方法などが細かく決められています。プロトコルをしっかり読んで順守していく必要があります。自分が携わったことのない領域の臨床検査が含まれる治験に携わることもあります。私の場合は生化学検査や血液学検査の経験がなかったので、それらの検査が関わる治験では、院内の担当臨床検査技師のところへ赴いて、検査の方法や流れなどを教えてもらうようにしていました。

 また、治験では、それまでは関わる機会がなかった診療科や製薬企業関係者の方々と接する機会が増えました。特に、被験者に接することは、それまでにない経験として印象に残っています。診察室で医師の検査説明をサポートしたり、検査データをもとにその後の方針が決定する場面に立ち会ったりしました。被験者は回復に向かう方もいますが、治験の途中で亡くなる方もいます。治療経過や患者の動向を知り、臨床の最前線で仕事をしているんだなと実感しました。
◆コミュニケーション力が必要

―臨床検査技師のCRCとしての可能性や必要なスキルについて、お考えをお聞かせください。
 私自身、治験推進部を経て臨床検査技師長に就任して4年目で、組織をマネジメントする立場です。管理職として当然、院内他部門の方や部内スタッフと話す機会が多いですが、CRCの頃に求められていたコミュニケーション力の重要性を改めて感じています。

 どの職種、どの立場でもコミュニケーションは重要だと思いますが、CRCは多様な方と関わり、一緒に治験を進めていかなくてはなりません。被験者の具合が悪くなった時や治験報告書を作成する時、その時々に、被験者や医師、製薬企業の方々と連絡を取り、話をする必要があります。さまざまな仕事がありますので、どの案件を優先して、誰に伝えるのか。優先順位も考えなくてはなりません。

 臨床検査技師の皆さんは、日頃から検査数値を取り扱っており、精度管理の知識もあります。細かい業務を正確に実施していくことが比較的得意な人が多く、治験をプロトコルに沿って正確に実施していく業務にもなじみやすいと思います。自分の経験を振り返ってみても、CRC業務は臨床検査技師の特性を生かすことができるのではないかと感じています。

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