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〈第4回〉医療専門職団体編


神戸 翼(永生総合研究所 所長/臨床検査技師)

 

今回のキーワード

医療専門職団体の目的と役割

日臨技事業に寄せる期待

会長選挙は「推し」の候補者に一票を

 

 第4回目の今回は、日本臨床衛生検査技師会(日臨技)の会長候補者選挙の投票も目前にせまり、これまで所々で言及してきた医療専門職団体について整理してみたいと思います。


医療専門職団体とは?


 医療専門職団体(職能団体)とは、医療分野で専門知識や技術、資格を持つ人々が集まる組織を指し、職種に関連した共通課題解決に向けて団結し、環境を整えるなどを目的にしています。専門性の維持・向上、職業としての待遇や利益を守り改善すること、メンバー同士の親睦や互助、専門職としての社会的提言や社会貢献、研究活動などを行います。また、利益団体の一つであり圧力団体とも呼ばれ、政治家や官僚に影響を与えるロビー活動を行うことや、中央政府や自治体における審議会で専門的な意見を提供する役割も担っています。歴史的には、中世ヨーロッパのギルドにルーツを持つとも言われ、国内ではほぼ全ての医療系国家資格に対応する職能団体が存在します。


 ちなみに職能団体の中には、強制加入団体の形をとる日本弁護士連合会(日弁連)のような団体もあり、これは加入が法律で義務付けられています。過去には、医師会や薬剤師会なども強制加入制がとられており、公共性や倫理性の強さ、国家による監督取り締まりの視点が背景にありました。現在は多くの団体において強制加入制を廃止しています。


日臨技の実態と期待


 日臨技は、約70年の歴史を持つ医療専門職団体で、1952年に日本衛生検査技術者会として設立され、その後いくつかの改組・改名を経て、2012年に現在の形になりました。2023年3月末の時点で約7万人の会員がおり、国内の医療機関勤め臨床検査技師の約74%(2020年時点。筆者計算)が所属しています。入会が任意でありながら組織率の高さは注目に値しますが、一方で会員の間では帰属意識が低いとの声もあり、事実、会長選挙や、いわゆる組織内候補議員の国政選挙の投票率の低迷が気になるところです。


 日臨技の事業については、検査および検査技師の実態調査や関係省庁との連携、認定制度、学術的な研究、調査や研修など、全19項目が定款に規定されています。一般的な利益団体や医療系専門職団体と同種類の活動を行っていると考えてよさそうです。また、経常収益は約14億円、経常費用は約13億円(2022年度)という規模で運営され、総じて臨床検査技師と業界全体のために重要な役割を果たしています。


 今後さらに期待される部分としては、1つ目は「政策提言機能の強化」です。現在、臨床検査技師ホルダーの国会議員がおらず、専門職団体の本筋でもある政策提言機能が弱まっています。また、最近特に重要視されているエビデンスに基づく政策提言(EBPM)の視点に立った要望書やレポートの作成も重要です。そのための産学連携と地方自治体への提言も含めたシンクタンク機能の強化が課題といえそうです。


 2つ目は「卒後教育における連携とビジョンの遂行」です。学会や養成学校との連携と機能分化を推し進め、他団体が扱っていない領域や、採算が乏しくても技師会として推し進めるべき領域にしっかりと向き合っていくことが求められます。


 最後は、臨床検査技師という職業への認知度向上のため、その魅力やキャリアパスを積極的に発信し、職業としてのイメージ強化を図る必要があります。


会長選は業界を変えるチャンス


 いよいよ12月18日からは事実上の日臨技会長選挙といえる、会長候補者選挙の投票期間が始まります。臨床検査技師の代表である会長は、他の医療専門職団体の会長陣と並び、官僚や国会議員などとも意見を交わす非常に重要な役割を担います。臨床検査技師の顔として外交的に信頼され、技師会としての組織運営と事業推進のためのリーダーシップが求められます。また、本選挙では、別の医療専門職団体で採用されている代議員制(一部の方しか投票権がない)ではなく、一人一票の公平な制度を採用し、全会員が直接自らの意見を反映できる場となっています。


 ぜひ、あなたの貴重な一票を期待している立候補者へ投票していただければと思います。


 最後に、筆者個人が考える選挙の注目ポイントをまとめてみます。1つ目は「情報リテラシー」を持った立候補者かという点です。例えば、オンライン選挙活動の有無が参考になります。立候補者の顔が見えないと正当な選択ができないわけですが、自身の見える化を積極的に行い、知ってもらおうとしているのか。これは会長就任後の情報発信スタンスにもつながり、新しいことに挑戦していくというビジョンの実践でもあります。2つ目は「ビジュアルと人となり」です。選挙コンサルタントがよく言うのは、まずは共感ポイントがあるかどうかです。そして、その中でも見た目(ビジュアル)や人柄、経歴から入るのが一般的と言われています。清潔感や真摯な対応、部下や後輩、顧客への態度と気配りなどは共感と好意につながります。最近の選挙ではユーチューブやブログがよく用いられますが、人柄を知るのに有効です。ネットやSNSで候補者の名前を検索し、情報があればぜひご覧ください。3つ目としては「想いや公約」に共感できるかです。候補者が発信する情報として、どんな未来を描いているのか、そのビジョンと具体的な活動項目、そして課題感に共感できるのかは重要な基準になります。視野が狭く、地位や権力ばかりに意識が向いている姿勢ならば警戒が必要です。


 以上、今回は臨床検査業界で現在注目されている会長選挙を意識しながら、医療専門職団体について書いてみました。一人一票はSNS時代にはとても大きな力になります。また、選挙においては誰かに頼まれて促されるままに投票する場合も少なくありませんし、もちろんそれも一つの方法です。ただ、業界の未来を背負う団体のトップを決める機会ですので、ぜひこの機会に技師会という専門職団体の在り方を考えていただき、この人なら何とかしてくれるという「推しの技師会長候補」を見つけていただければと思います。



(MTJ本紙 2023年12月1日号に掲載したものです)

 

神戸 翼

PROFILE 慶應大学院で医療マネジメント学、早稲田大学院で政治・行政学を修め、企業、病院、研究機関勤務を経て現職。医療政策と医療経営を軸に活動中。

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