〈レポート〉#17 骨折リエゾンサービスに検査技師が参画 二次骨折予防に貢献 日進おりど病院
- mitsui04
- 4月30日
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日進おりど病院(愛知県日進市、129床)の臨床検査科は、同病院が2022年から取り組んでいるFLS(骨折リエゾンサービス)に参画し、脆弱性骨折患者の二次骨折防止で重要な骨代謝マーカー検査の適切な実施に貢献している。検査を必要なタイミングで行う仕組みを構築。薬物治療の内容に合わせて検査セットを複数選択できるようにした。こうした取り組みでFLSの目的である二次骨折予防につなげている。

日進市は愛知県中部に位置し、西側を名古屋市と接している。日進おりど病院は1980年に開設され、「質の高い医療の提供を常に心がけ、地域住民から信頼され、社会に貢献できる医療施設を目指す」との理念を掲げる。小児科や神経内科に関連する専門外来を含めて16診療科を標榜。健診を行う予防医学推進・研究センター、在宅医療センター、有料老人ホーム、病児・病後児保育センターを併設している。2013年には2次救急指定医療機関などの指定を受けるなど地域医療に貢献してきた。
臨床検査科には13人が在籍。検体検査と生理検査は、全員がローテーションで担当する運用をとっている。採血業務は外来だけでなく、看護師のタスクシフト・シェアの一環で病棟採血も実施している。また、乳腺外来では診察介助を看護師に代わり臨床検査技師が担当している。
◆チーム活動1年後から参画
同院でのFLSチームの活動は2022年9月に整形外科医や看護師、薬剤師、事務管理部門を中心とするメンバーで始めた。FLSサービスは、脆弱性骨折患者の二次骨折予防を目指すチーム医療の取り組み。FLSの活動に対しては、2022年の診療報酬改定で「継続的な二次性骨折予防」に係る評価として保険請求ができるようになった。一定の要件を満たせば「二次性骨折予防継続管理料」が算定可能だ。
FLSチームには当初、検査技師は参加していなかった。一般的にFLSチームの構成は医師、看護師、薬剤師のほか、管理栄養士や理学療法士、作業療法士などが中心で、臨床検査技師の参画はあまり考慮されていないのがその理由。同院のチームでの活動では、当初は参画していなかった診療放射線技師に続いて臨床検査技師も加わることになった。
FLSチームに臨床検査技師が参画するようになったのは2023年9月。チームが活動を始めた1年後に当たる。二次骨折リスクの評価の基本となる関連マーカー検査が適切なタイミングで行われていないことが課題として浮かび上がってきたことがその背景にある。チームメンバーからは、適切に検査をフォローし、骨折予防につなげるため、検査技師がチームに加わるよう要請された。臨床検査科の小木曽美紀科長は「メンバーは同院のほぼ全ての部門から構成されているのが一番の特徴だ」と話す。
◆骨代謝マーカーの適切な実施
FLSチームには臨床検査科から小木曽氏と原田智世氏の2人が参画している。チームに加わってまず手を付けたのは、大腿部近位骨折で手術を受けた患者に作成している「二次性骨折予防チームカンファレンス記録テンプレート」の入力。テンプレートは手術室の看護師がシートを作成し、各部署の職員がデータを入力する。2023年9月以降は検査技師が腎機能関連や血液検査、骨代謝マーカー検査の結果をチェックしている。

臨床検査科がFLSチームに参加する前は、二次骨折のリスク評価に必要な検査の実施タイミングがまちまちだったり、未実施だったりしていた。また、骨代謝マーカー検査は、骨吸収や骨形成、骨基質関連などの指標に分かれ、種類も多岐にわたる。マーカー検査は保険請求上、併用不可だったり、実施回数に制限があったりする項目も多いため、医師に対して適切な検査実施タイミングでの依頼を要請しているという。また、評価に必要だが実施されていない検査項目は代行オーダーの形で、検査を追加するなどの取り組みを進めた。
その後の活動では、入院時に行う骨粗鬆症検査の初回セットを治療方針で使い分けできるよう複数準備した。基本的な検査項目に違いはないが、骨代謝のスピードによって、副甲状腺ホルモン薬や抗スクレロチン抗体などの骨形成促進薬を投与する場合には、より早期の骨形成を確認できるtotal P1NP(Ⅰ型プロコラーゲン-N-プロペプチド)を設定。ビスホスホネート薬や抗RANKL(RANKリガンド)抗体薬といった骨吸収抑制薬を投与する場合はBAP(骨型アルカリフォスファターゼ)を測定できるようにした。
退院後の外来で行う治療効果判定のための検査の徹底にも取り組んだ。日本骨粗鬆症学会の「骨粗鬆症診療における骨代謝マーカーの適正使用ガイド」を基に退院後4カ月目と1年後の検査セットを設定。検査の依頼し忘れを防ぐため、電子カルテの掲示板を活用した。さらに外来看護師と測定時期を共有して検査の実施漏れを減らす取り組みも始め、検査結果を検査技師が確認することにした。。

こうした活動で入院時や外来での骨代謝マーカー検査実施率は大きく上昇した。FLSの活動開始時点(2022年度)で約6割だった入院時の検査実施率は検査技師がチームに加わった2024年度には9割を超えた。また、退院後の検査実施率は、2023年度には3割台だったが、1年後の2024年度には6割超となった。退院後4~6カ月で行う検査の実施率も5割台から8割台まで上昇し、治療効果のフォローアップにつながった(図)。
小木曽氏は、「入院時や退院後2回の検査を適切に医師にオーダーしてもらい、治療の評価につなげることが大事」と、FLSに検査技師が関わる意義を説く。FLSチームに関わるようになって1年半がたち「今は検査を適切な時期に適切に行うという流れができてきた」と話す。
◆チーム医療にどんな貢献ができるか
臨床検査科では、FLS以外にICTやNSTなどにも参画。在宅患者に対しても採血などの検体採取、心電図検査、超音波検査などを行い、チーム医療に積極的に参画している。医師を含めて他部署とのコミュニケーションが活発で、お互いに業務上の問題や疑問などを相談しやすい環境があるのも活動を後押ししている。
一方で、小木曽氏は「チーム医療に参画する際に検査技師がそのチームでどんな貢献ができるかをしっかり考えることが重要だ」とも説く。その上で「きちんと自分たちができることを相手側に理解してもらう。参加するだけでなく具体的に提案していくことが大事」と強調する。
4月には3人の新入職員を迎えた。小木曽氏は「今後は(人員不足で対応できていなかった)骨粗鬆症治療評価やチームとして関わっている業務にもっと主体的な関与を行いたい」と話す。一方で社会的にも人材不足がいわれる中で「検査業務も効率化が必要。検査室内の機械化できる業務は機器やシステムに任せ、検査室外の業務からも地域に根ざした医療貢献のできる検査科としたい」との将来像を描いている。
