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〈インタビュー〉藤部綾子さん(北5条通り内科・循環器クリニック)「患者に寄り添う接遇の意識を持ってほしい」

  • mitsui04
  • 4月21日
  • 読了時間: 8分

 インタビュー「きらり臨床検査技師」は検査技師としての本来業務だけでなく、所属施設外で精力的な活動を行っている方、興味深いテーマや研究に打ち込んでいる方、ユニークな資格や経歴を持つ方など、編集部が“きらり”と感じた検査技師を紹介します。(MTJ編集部)


 札幌市のクリニックに所属する藤部綾子さんは、検査実務に限らず、さまざまな知識を学んだり、スキルを習得するのが好きな資格マニアだ。現在担当している超音波検査の関連認定資格はもちろん、患者に寄り添う医療ホスピタリティ接遇検定やコーチング講座、認定ストレングスカウンセラー、狩猟免許などのユニークな資格を持つ。多方面で活躍する藤部さんに、取得した認定資格がどのように生かされているのか、所属施設外での活動も含め、検査技師としてのやりがいや、これからやってみたいことなどについて話を伺った。
―先日、藤部さんが講師を務めた研修会に参加したのですが、検査領域以外にもさまざまな資格取得に興味を持つアクティブな臨床検査技師という印象を受けました。まずは臨床検査技師を目指すようになったきっかけや、現在のキャリアをざっくり振り返っていただけますか。

 幼い頃に入院経験があり、その際に支えていただいた医療スタッフの姿を見て、将来は病院で働く医療職に就きたいという思いがずっとありました。医師や看護師、薬剤師くらいしか知りませんでしたが、高校に入り、北海道大学に進学することを目標にして、そこで取得できる医療職を調べる中で臨床検査技師を知って。生物の授業や顕微鏡をのぞくのが好きだったり、看護師だった母親からも医療職の話を聞きながら、臨床検査技師の道を選んだ感じですね。超音波検査や病理のような自分の目で見ながら検査する業務に興味がありました。

 入職してからは総合病院から専門病院まで、いくつかの病院で検査実務の経験を積みました。それぞれの職場で専門領域の奥深さや知識、スキルを学びながら、学会発表や運営のノウハウも学んだり、それに伴い人脈も少しずつ広がってきたのかなと感じています。

◆エコー中心に、クリニック全体業務も

―勤務してきた各病院にはそれぞれの役割や特徴がある中で、そこでの担当業務に必要な資格を少しずつ取得してきた感じでしょうか。今はクリニックの副院長でもありますが、日常的な業務内容を教えてください。

 職場で任された担当領域は極めてみたいと感じるタイプで、これまでに認定心電検査技師、超音波検査士(循環器、表在、消化器)、神経伝導速度専門技術師、脳波専門技術師などの資格を取得しました。いずれも医師の診断に直結する重要な検査ですし、高精度な検査を提供できるよう知識や技術を身に付けてきたつもりです。

 今の内科・循環器クリニックでは、主に心エコーや頸動脈、下肢静脈、腹部など循環器疾患の診断に関連する超音波検査を担当しています。リアルタイムで病態を評価する検査ですので、緊急性の高い疾患を見つけ、大病院に迅速に紹介できたケースなどにはやりがいを感じます。また、検査業務だけでなく、レントゲン補助や医療事務補助、総務業務、SNS広報業務にも携わっています。クリニックの副院長として、今までの経験をフルに生かしながら、病院勤務時代にはなかった施設全体を見渡しての仕事はやはり新鮮ですね。

◆不安や緊張感を和らげる接遇スキル

―臨床検査技師では珍しいと思いますが、「医療ホスピタリティ接遇検定」の資格をお持ちです。なぜこういった資格に興味を持ったのか。検査技師の日常業務でどのように接遇ノウハウを生かしているのでしょうか?
バイト先での思い出のスタッフTシャツ
バイト先での思い出のスタッフTシャツ

 学生時代、マクドナルドやディズニーストア、百貨店でバイトしていた経験があり、接客業務には自然と慣れていたことはあるかもしれません。ただ、臨床検査技師として働き始めると、やはり一般的の接客とは明らかに違うことに気付いて。当たり前ですが、病院に来る人は必ず不安を抱えているので、サービス精神のある一般的な接客だけでなくて、それぞれの患者さんの心情に寄り添ったり、安心感を提供するといった、より丁寧な接遇スキルが必要だと思うようになりました。医療職としてそれを体系的に学んでみたいと思ったのが、医療ホスピタリティ接遇検定(接遇教育推進機構)を勉強するきっかけだったと思います。

 例えば、エコー検査では一定時間、患者さんと向き合いますが、やっぱりそこでの言葉遣いや表情、声のトーン一つで患者さんの緊張感や不安を和らげることができます。専門職としての知識や技術を高めることと同じくらい、「患者さんとどのように向き合うか」といった視点が求められていると感じています。

 最近は医療訴訟の背景の一つに、患者とのコミュニケーションの行き違いなどがあることも多いと聞きます。患者に寄り添った接遇で、臨床検査技師を含めて医療者に良い印象を持ってもらう努力もますます大事です。医療接遇のスキルが生かせる場面は患者さんの対応だけではありません。医師や看護師からの検査部門への問い合わせであったり、院内の他職種との円滑なコミュニケーションにも生かせることもぜひ伝えたい部分です。

◆検査以外の資格生かした副業も

―医療接遇以外にも、コーチング講座やストレングスカウンセラーなどの資格をお持ちです。臨床検査技師の日常業務とは少し離れているような感じも受けるのですが、これらのノウハウが生かせるのはどういった場面でしょうか。

 コーチング講座(ZaPASS)で得たスキルは、目標を定め対話を通じて成長を促すことに役立てるもので、認定ストレングスカウンセラー講座(ポジティブ心理カウンセラー協会)では人の強みを見つけてアドバイスするノウハウを学びました。検査技師としての知識と、これらのスキルを組み合わせながら、若手検査技師の学びの手助けや、悩み相談に乗ったり、メンタルサポートもできるようになりたいです。

 現在コミュニティマネージャーとして関わっているオンラインコミュニティーサイト「くまのこ検査技師塾」でも役立っています。検査技師同士が学び合って、情報交換できるサイトですが、こうした場で全国の検査技師の皆さんをサポートする活動にとても興味があります。例えば、エコー検査の技術やノウハウをもっと学びたいけど、さまざまな理由で学ぶことができない検査技師を支援したり、やる気を引き出したり、応援していきたいですね。

 オンラインコミュニティーの運営や、コーチングやストレングスカウンセラーの資格を生かした活動は副業として収入も得ています。副業は、病院勤務の検査技師からすると現実的でないかもしれませんが、私のような臨床検査技師がいることを知って、検査技師のこれからの働き方を考える機会になってくれればうれしいです。

 基本的に知識を習得したり、学ぶことが好きなのでまだまだ資格を取りたいと思っています。今の日常業務にも生かせる資格として、日本循環器学会の「心不全療養指導士」や、医療事務の「診療報酬請求事務能力認定試験」はぜひ、取得したいと考えています。

◆アウトドアで気分転換、狩猟免許も取得

―日常業務だけでなく、さまざまな認定資格で得たスキルを活かしながら多方面で活躍していますが、プライベートでの気分転換やリフレッシュを含め、休日はどのように過ごされているのでしょうか。

 生まれ育った札幌近郊は自然も多く、キャンプやアウトドアが好きです。忙しい日々の中で、北海道の大自然の中で子どもと一緒に過ごす時間がリフレッシュの機会になっています。検査技師は集中力が必要な場面がやはり多いので、オフにしっかりリラックスする時間をつくることは、仕事で良いパフォーマンスをする上で大事なことだと捉えています。若い頃はダンスや踊りも好きで、札幌市の「YOSAKOIソーラン祭り」にも参加していました。

狩猟免許取得時の教本
狩猟免許取得時の教本
 プライベートの資格でも昨年、狩猟免許を取得しました。昔から興味はあったのですが、北海道を舞台とする「ゴールデンカムイ」(漫画・映画)を見た影響で思いが強くなって。これから銃所持許可免許も取得し、本格的にやってみたいと思っていて、ジビエ料理にも挑戦してみたいです。

◆楽しく学べる、成長できる機会を提供したい

―様々な職場で経験を積み、認定資格の取得も重ねてきたキャリアを振り返りながら、改めて臨床検査技師のやりがいはどういった点だと考えますか。また、これから中堅、ベテランになっていく中で、若い世代の臨床検査技師に伝えたいことや、これからチャレンジしたいことを教えてください。

 病気を診断して治療するのは医師ですが、原因を突き止めるための重要なデータを提供できるのが臨床検査技師です。目に見えないような異常を探し出し、その情報が患者の治療に直結する。病態をデータから読み解き、病気の根本的な原因を見つけ出す過程が面白いと思います。検査スキルや技術、知識を生かすだけでなく、医療接遇などのノウハウも生かしながら、患者が抱えている不安を軽減できることにもやりがいを感じています。

医療接遇テーマに北臨技研修会で講演
医療接遇テーマに北臨技研修会で講演
 北海道医学検査学会などにも参加してきましたが、今は北海道臨床衛生検査技師会の常務理事として生理機能部門の研修会等の企画、運営なども担当しています。意識しているのは、皆さんが「気軽に楽しく学べる場」であるかということ。専門知識を深めるだけでなく、他施設の検査技師との交流ができたり、情報交換を通じ、日常業務で得られない視点や、知識や技術を共有できるメリットは私自身が感じてきたことです。

 比較的若い年代の検査技師には、こういう場での出会いが自身のキャリアを考えるきっかけになることも多いのでぜひ、参加してみてほしいですね。検査技師同士が刺激を受け合いながら成長できる、学びの場をつくり、関わっていくことはこれからの自分の大きなテーマです。私自身も、検査技師のこれからの働き方や、資格取得などキャリア形成のアドバイスなども含め、皆さんの役に立てるようにまだまだ頑張っていきたいです。

研修会後の懇親会で尊敬する医師・馬場正之氏らと
研修会後の懇親会で尊敬する医師・馬場正之氏らと


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