日本医師会は3月8日、東京都内の日医会館で、第57回となる2023年度の臨床検査精度管理調査報告会を開いた。今年度の参加施設は前年度から11減の3200施設で、うち76.1%が大学病院以外の病院・診療所が占めた。評価結果を見ると低濃度試料においてフェリチン、PT-INRが他の項目と比べてD評価の割合が高い結果となった。
日医の精度管理調査は、結果の評価に、臨床上の必要性などを踏まえて臨床検査精度管理検討委員会(高木康委員長)が決めた「コンセンサスCV(変動係数)」を併用していることが特徴。統計上算出した補正共通CVと比較して大きい値の方を評価基準に採用するため、検査データが収束していても統計上の理由でD評価が出るような事態を避けるようになっている。
低濃度試料で主要13項目のD評価の施設割合はいずれも1%に満たないが、フェリチンが1.7%、PT-INRが1.1%と比較的高かった。フェリチンは、非ラテックス法において方法間CVが30.98~35.03%と大きく、調査試料の濃度が高いとCVが広がる傾向があった。
PT-INRは、方法内変動の割合(ドライヘマトを除く)が前年度まで減少傾向にあったが今年度は8.12%に上昇し、7%程度を超えたことから試薬別評価となった。高木氏は、「臨床的な意義を考えるとPT-INRはぜひ一括評価したい」と述べ、施設側の対応を要請した。委員会では一括評価ができるよう、▽試薬・機器の一層の標準化▽可能な限りISIが1.0前後の試薬を使う▽方法内変動を最小限にする努力ーを呼びかけている。
各項目の評価は原則として一括評価を用いるが、一定の乖離を認める場合は試薬別の独立評価としている。今年度は13社の30の試薬が独立評価となった。最も多いメーカーは9項目が独立評価だった。高木氏は「独立評価のメーカーには原因や状況の詳細な検討をお願いしたい」と述べ、実試料と調査試料を測定した検討結果などを委員会に報告するよう要請した。今年度は2社から報告があったが残りの会社にも対応を求めた。
●トレーサビリティーの確認施設が増加
また、トレーサビリティーを確認している施設の割合については、項目によって、93.4±1.3%(91.1~96.2%)と前年度の92.8±1.4%からさらに増加した。確認している施設では、3SD以上乖離(外れ)の割合が0.81±0.72%と、確認していない施設の2.54±1.56%に比べて低く、トレーサビリティーを確認することの有用性が改めて示されている。
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