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〈レポート〉PSGを通じた医療連携 検査技師が存在感 太田綜合病院附属太田西ノ内病院


 太田綜合病院附属太田西ノ内病院(福島県郡山市、1086床)の総合睡眠医療センターが、終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)による閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)の地域医療連携を行っている。クリニックなどで行った簡易検査を基に同病院が直接、PSGを行い、結果レポートの返却やCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)療法の装置設定のアドバイスを行う。開始から9年が経過し、地域に根付いたOSAの医療連携体制で臨床検査技師が存在感を発揮している。

 
太田綜合病院附属太田西ノ内病院

チーム医療に広く参画


 太田西ノ内病院の生理検査科には臨床検査技師37人が所属し、循環生理や呼吸生理、神経生理など100に近い生理検査項目を行う。特徴の1つは、カテーテルアブレーション治療に参画したり、心臓デバイスの植込み術への立会い及びペースメーカーの週1回のチェックまでも行っていること。前技師長の時代に検査技師5人から取り組みを始め、最大40人が所属する生理検査室が構築され、チーム医療に幅広く参画する現在の体制ができたという。

 広汎な検査体制を引き継いだ黒﨑幸子技師長は、「スタッフの希望をできるだけ聞き入れることで、楽しく仕事ができ、かつやりがいを感じる検査室にしたい」と語る。さまざまな研修会に積極的に参加し新しい検査に関心を持つ検査技師が少なくない。コミュニケーションを取り本人の希望や興味を引き出しながら、適材適所の配置を考えているという。

 総合睡眠医療センターは、全国117カ所ある日本睡眠学会認定の専門医療機関の1つ。2種類の認定のうち、睡眠障害全般の医療を行う「A型」に該当する。

 睡眠検査の検査室4室を運用し、検査技師37人のうちカテーテル室の担当技師らを除く22人が夜勤2人体制で週2日、PSGを行う。日本睡眠学会が認定する専門検査技師の資格を10人が取得し、睡眠検査を専門とする黒﨑技師長を中心に検査の質を追求してきた。

データ解析の様子
 日本睡眠学会の「エキスパートコンセンサス1」によるとPSGは、睡眠呼吸障害の診断や治療効果判定のゴールドスタンダードの検査。夜間8時間以上の記録時間が必要で、その間、測定不良や患者の状態観察などにいつでも介入できるよう、訓練された検査技師などによる常時の監視(アテンド)が求められる。同センターでは、夜勤の2人の検査技師がそれぞれ2つの検査室を監視し、理想的な検査体制ができていると黒﨑技師長は自負する。

 地域の紹介患者は以前から受け入れてきたが、2015年ごろ、疾患の認知度向上に伴う患者増に加え、睡眠専門医が非常勤になったことで診療枠が縮小し、紹介から初診までの期間が長期化。4カ月待ちになった。検査枠には余裕があるのに診察枠が不足するために紹介患者の検査が遅れる。この状況を改善しようと黒﨑氏らが構想したのが、「PSG直接入院」と呼ぶ仕組みだ。睡眠専門医や検査技師、地域医療連携の担当者の3人で郡山市内のクリニックを中心に21の医療機関を訪問し、医療連携の実現にこぎ着けた。

「PSG直接入院」を導入

 睡眠呼吸障害の多くは睡眠時無呼吸症候群(SAS)とされ、その9割をOSAが占める。睡眠時無呼吸が疑われる場合、簡易検査が使えるが、その結果、AHI(無呼吸低呼吸指数)が40以上であれば、標準治療であるCPAP療法の適応となる。簡易検査でAHIが40に満たない場合はPSGによる確定診断を行い、AHIが20以上にCPAP療法が行われる。

図1 直接入院の特徴
 以前は紹介患者の初診から簡易検査、PSGまで西ノ内病院で行っていたが、PSG直接入院の仕組みではこの診察の流れを変更(図1)。紹介元の医療機関で行われた簡易検査を基にPSGを行い、結果の解析やCPAP指示書、診療情報提供書を紹介元に報告するようにした。患者への検査結果の説明やCPAP療法の導入は紹介元の医療機関が行い、患者を継続的に管理する。

 PSG直接入院の導入の効果は顕著で、初診予約の待ち時間は1カ月に短縮した。睡眠検査部門を統括する技師長補佐の兼田享子氏は、「PSGの枠が有効に活用できている」と実感している。診察枠に余裕ができ、その分、ほかの睡眠障害であるナルコレプシーやレム睡眠行動障害、過眠や不眠などに以前よりも早く対応できるようにもなった。院内他科からの患者の受け入れも迅速になり、「良い取り組みになっている」と話す。

 検査技師にさまざまな役割

 PSG直接入院では、検査技師がさまざまな役割を担う。紹介元からの電話連絡を受け、あらかじめ決められた「確認シート」を使って簡易検査等の結果や服用薬などを確認。その上でPSGの実施や事前説明の日程を調整する。

 紹介患者には検査技師がPSGや入院の説明などを事前に行い、希望があれば検査室の見学にも応じる。説明にかける時間は1人20〜30分。担当技師の1人である佐藤麻友氏によると、夜間のトイレや検査翌日朝の退院時間、会社への出勤時間についての問い合わせが多く「慣れないベッドで寝られるかどうか、心配する患者さんもいる」。できるだけ不安が解消されるような説明を心がけているという。

 検査当日は、医師の診察やバイタルサインの確認のあと、検査技師がセンサーを装着し、検査の状況を監視する。

 さらに、連携先医療機関との合同勉強会を年2回開催し、検査データの相談などにも検査技師が応じる。紹介元や患者からの問い合わせ件数は月200件前後に上る。

 総合睡眠医療センターの睡眠専門医の金子泰之氏は、「検査技師の皆さんがパワフルで、それで動いているところがある」と検査技師の原動力を指摘する。「睡眠医療では検査技師の役割が大きい。その方たちが頑張って体制を整え、支えてくれているからこそ、連携体制が運営できている」。

 検査を通じて地域医療に貢献

図2 PSG 総数・PSG 直接入院数の推移
 同センターのPSG件数は年300件程度。コロナ禍に落ち込んだが、その後、増加に転じ、2023年は286件にまで回復した。一方、PSG直接入院の件数はコロナ禍でも増え続け、2022年度に87件、2023年度に84件になった。全PSG件数の3割近くを占める(図2)。課題だった院内他科からの患者受け入れ数も2023年に増加し、院内医師に合同勉強会への参加を促してきたことなどの成果がみえてきた。

 睡眠時無呼吸症は、心不全や心筋梗塞などの心疾患、2型糖尿病との合併が指摘されている。こうした認識が院内外の医師らにも広がり、結果、PSG件数の増加につながっていると金子氏はみる。

 一方で金子氏は、導入したPSG直接入院が実際に治療の質向上につながっているか、今後検証していくことを課題に挙げている。「CPAP療法は特にアドヒアランスが重要。紹介患者の治療継続の割合などを調べて、さらに対策を立てていきたい」と話す。

 医師の働き方改革や地域の人口減少などを背景に、限られた医療資源を有効に活用する診療連携がこれからさらに求められていく。同センターでは、紹介患者へのPSGをはじめ、検査技師が多様な役割を担う。臨床検査を通じて検査技師が地域の睡眠医療に貢献している。

金子医師(後列右から2人目)と検査技師の皆さん(黒﨑氏は前列右)

(MTJ本紙 2024年9月1日号に掲載したものです)

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