〈レポート〉#20 リキッド対応のNGS検査室、初のCAP認定 松阪市民病院
- mitsui04
- 8月5日
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松阪市民病院(三重県松阪市、328床)のがんゲノム解析室は、院内で行うLDTの遺伝子検査の品質を担保するため、CAP(College of American Pathologists=米国病理医協会)の認定を2025年2月に取得した。キックオフから9カ月という異例の早さで認定取得にこぎ着けた。リキッドバイオプシー(血漿)を使用したNGS(次世代シーケンサー)遺伝子検査を行う検査室として全国初の認定となった。

遺伝子検査の本格導入は2019年にまでさかのぼる。LAMP法による結核菌検査は以前から行っていたが、同年4月、デジタルPCRの装置を導入し、呼吸器感染症のMAC症に加え、EGFR、BRAFなど臨床的意義のある肺がん関連遺伝子の検査を開始した。2024年1月にはがんゲノム解析室を設けた。
◆背景に呼吸器センターの存在
背景には、病院の強みの一つである呼吸器センターの存在がある。ホームページによると常勤医14人(2024年時点)が所属し、肺がんや慢性閉塞性肺疾患(COPD)などに対し呼吸器内科や呼吸器外科、放射線科などが集中的な治療を行っている。センターが目標とする「高度で適正な医療を提供する」ためには、正確な診断に基づく迅速な治療が欠かせない。TATの大幅な短縮が見込める院内でのがん遺伝子検査が重要になった。
2019年導入のデジタルPCR装置に続き、コロナ禍の2020年9月にリアルタイムPCR装置、マルチPCR検査装置など3機種を、2021年10月にNGS装置を相次いで導入した。2023年12月以降に全自動遺伝子解析装置を2台導入し、診断率を上げるため、呼吸器パネルと共に、保険適応外の肺炎パネル検査も積極的に行っている。
検査項目は、結核やMAC症、新型コロナウイルス感染症などの病原体遺伝子検査のほか、EGFRとBRAF検査、「AmoyDx 肺癌マルチ遺伝子PCRパネル」「Oncomine Comprehensive Assay v3」(OCA v3)「Oncomine Precision Assay」(OPA)。一番の特徴は、OCA v3、OPAという2つのLDTを院内で実施している点にある。OCAv3は組織検体、OPAは組織検体と血漿検体(リキッドバイオプシー)を使うLDTで、検査の品質を保証するためCAP認定の取得に踏み切った。
実際に検査を担当する臨床検査技師は西尾美帆氏ら3人。いずれも午前中は生理検査や一般検査などを行い、午後から遺伝子検査を担当する。臨床医が解析を急ぐ症例は、土日であっても「緊急NGS」として対応している。

外注検査に比べ院内検査は結果報告が早く、さらにリキッドバイオプシーは組織採取の必要がない。結果として早期の治療開始ができ、治療の質向上が期待できる。治療開始が20日程度、早まった症例もあるという。
◆ゼロからのスタート
がんゲノム解析室の技師長を兼ねる宇城研悟医療技術部長は、遺伝子検査の経験や知識がない生理検査のスタッフや新人を集め、「あえてゼロからのスタートを選んだ」と5年前を振り返る。旧来の考えにとらわれない柔軟なチームとし、「5年で、全国に少しでも名前が知られる遺伝子検査室になる」と自身の目標を定めた。
担当者の一人である西尾氏は、今も平日午前はルーチンの生理検査を行い、午後からゲノム解析室の業務に向かう。部屋の開設当時、遺伝子検査に対する自身の経験や知識を尋ねると「ほとんど無だった」と笑う。「誰に聞いていいかも分からず、何から勉強すればいいかも分からない。無、ゼロという状況」。毎週のカンファレンスで、呼吸器センターの医師らから指導を受け、さらに大学病院などの医療機関や研究所などに研修に行き、知識やスキルを徐々に高めた。指導を受けた医療機関などからは今もアドバイスをもらっているという。

CAP認定は、2025年3月末までの短期間での取得を計画し、2024年5月のキックオフから取得までわずか9カ月。標準とされる12~18カ月と比較して圧倒的な短期での取得となった。西尾氏は、必要な書類作成を先回りして準備するなどの「要領が良かっただけ」と謙遜するが、担当者の相当な頑張りがあったことは間違いない。ISO 15189の認定を取得していない検査室であることを考慮すれば、取得に向けた現場の真剣さがさらに浮かび上がる。
CAP認定を受け西尾氏は、「第三者に認めてもらったことが検査への自信になった」と話す。また、宇城氏は、「松阪の地域でこの検査を必要とする患者さんに信頼できる検査結果を届けられる」とし、さらに「若い医者たちに魅力的な病院であり続けるための一つのデバイスにもなる」と指摘する。NGS検査を院内で実施しやすい体制が患者本位の医療を支え、若手医師にとって魅力的な病院づくりになる。宇城氏はそう確信している。
